オフィスに必ず備えておきたい【防災備蓄品12選】
地震や台風などの災害が毎年のように発生する中、社員の安全を守るための防災対策は企業にとって重要な課題です。多くの企業が既に対策を講じていると思いますが、自社に適した備えが十分に整っていますでしょうか。
企業の防災担当者は、オフィスビルの耐震強度の確認、ハザードマップの確認、防災マニュアルの作成、避難訓練の実施、安否確認システムの導入、防災備蓄品の購入・管理など、多岐にわたる業務を担っています。
その中でも特に悩ましいのが「防災備蓄品」の準備です。今回は、必ず備えておきたい防災備蓄品について詳しくお伝えします。
INDEX
企業における備蓄の重要性
Q1貴重においても、備蓄の重要性は高まっていると思いますか。
防災備蓄の需要は年々高まっており、92.7%の企業が「備蓄の重要性が増している」と回答しています。しかし、担当者は、以下のような課題を抱えています。
Q6 Q5で「かなりある」「ややある」と回答した方にお聞きします。
備蓄品の管理を行う際の悩みを教えてください。(複数回答)
多くの企業が備蓄品の管理に悩んでおり、主な課題として「賞味期限や使用期限の管理が面倒」(68.8%)や「備蓄品の量がわからない」(43.8%)が挙げられています。
また、「備蓄品の量に過不足がある」(33.8%)や「何を備蓄したらよいか分からない」(26.2%)といった悩みを抱える担当者も一定数存在します。
そこで、次章では何をどのくらい備えるべきか、必ず備えておきたい【防災備蓄品12選】について詳しくご紹介します。
まず身の安全を守り「命を守るための備え」
【1】 ヘルメット 従業員分
まずは、何よりも従業員の「命を守る」ための備えが必要です。
ヘルメットは、地震や火災などの災害時に従業員の頭部を保護するために不可欠です。特にオフィス内では、天井や照明器具、棚の上の物が落下するリスクが高いため、ヘルメットの着用が重要です。従業員全員分のヘルメットを備えておくことで、全員が迅速かつ安全に避難できる体制を整えることができます。
【2】脱出用工具セット 各フロアに1セット
大規模な災害が発生した際、建物の倒壊や家具の転倒により、避難経路が塞がれることがあります。脱出用工具セットは、ドアや窓が閉じ込められた場合に迅速に脱出するための必需品です。
各フロアに1セット備えておくことで、どの場所にいても迅速に対応でき、従業員の安全を確保することが可能です。
【3】救急箱 各フロアに1セット
災害時には、けがや体調不良が発生する可能性が高まります。各フロアに救急箱を設置することで、負傷者への初期対応が迅速に行え、重症化を防ぐことができます。また、救急箱の設置場所を明確にしておくことで、誰でもすぐに対応ができるようにし、緊急時の混乱を最小限に抑えることができます。定期的な点検と補充も忘れずに行い、常に使用可能な状態を保つことが重要です。
また、備蓄品ではありませんが、オフィス家具の転倒防止のための固定器具や、ガラス飛散防止のフィルムなど、「被害を小さくする」ための備えも必要です。
緊急時の生命線になる「飲料水と保存食」
【4】水・食料×3日分
防災備蓄品といえば、まず思い浮かぶのが水や食料ではないでしょうか。
大災害発生時には、コンビニなどの店舗に人が殺到し、商品がすぐに無くなる可能性があります。
そのため、食料と水は必ず備えておきましょう。
【必要量の目安】
例)20人規模の事業所
水 :20人 × 3ℓ × 3日 = 180ℓ
食事:20人 × 3食 × 3日 = 180食
例)100人規模の事業所
水 :100人 × 3ℓ × 3日 = 900ℓ
食事:100人 × 3食 × 3日 = 900食
来客がある企業などは、外部用に10%上乗せして備蓄することが望ましいです。
また、リモートワークを導入している企業は、従業員数の80%程度に調整するなど、出社人数に応じた量を備えるのが現実的です。
また、多くの企業で既に備えている水と食料ですが、以下のようなタイプでの保管がおすすめです。
パウチタイプの食品がおすすめ
- 【理由】
- ・省スペースで保管できる
- ・ゴミがコンパクトになる
- ・衛生的に食べられる
- ・調理不要で、水を使わずそのまま食べられる
缶入りの乾パンやパンなどが一般的ですが、食べる際に手を使うため、手が洗えない環境では不衛生になります。
また、缶入りのパンは食べる時に薄い紙を剥がすものが多く、手がベタベタになることもあります。
一方、パウチ入りのパンは、パウチに入れたままパンに触れずに食べられるため、衛生的です。
レトルトのご飯も水で戻す必要がないものが多く、温めなくてもそのまま食べられるものもあります。
さらにパウチ入り食品は省スペースで保管でき、ゴミも折りたたんでコンパクトにできます。
災害発生後、しばらくの間は自治体によるゴミの回収が行われない可能性があり、その間はオフィス内にゴミを保管しなければなりません。
東日本大震災の避難所では、洗えない空き缶に雨水などが溜まり、悪臭や虫の発生原因となりました。
空き缶で手を切るなど、怪我の原因にもなります。食品は、ゴミになった時のことも考えて選びましょう。
CHECK 水・食料を用意するときのポイント
長期保存できる食品は一般的に5年間保存可能ですが、最近では7年や10年といった長期保存が可能な商品も増えています。入れ替えの頻度やコストを減らすことができるため、おすすめです。
アレルギー対応食や英語表記付き、ハラール対応食など、多様な社員に配慮することも重要です。
火や電気がなくても発熱し、食品を温められるヒーターは、災害時に役立ちます。温かい食事は心を落ち着かせ、活力を与えてくれます。
2リットルの水は安価ですが、注ぐコップが必要です。配布しやすさなどを考慮して、500mlのボトルが適しています。持ち運びにも便利です。
1人3日分が1箱に収められた商品は、倉庫などの保管スペースが限られている企業にも適しています。デスク下や本棚、ロッカーに収納でき、スペースを節約できます。
緊急時を支える「必需品」
【5】簡易トイレ
断水や配管の損傷でトイレが使えない場合に備えて、トイレの準備は必須です。
水や食料の配付が多少遅れても問題ありませんが、トイレの需要は発災直後から生じます。
断水でなくても、ビルはモーターで水をくみ上げていることが多く、停電中は水が出ないこともあります。また、見た目に問題がなくても、大きな地震の後は内部で配管が損傷し、流すと逆流する恐れもあります。水が確保できても、下水道・浄化槽・下水処理施設の破損により排水先が破損している場合はトイレを流してはいけません。見た目に問題がないからといって、水が流れないトイレを使ってしまうと、その後の避難生活で衛生面で大きな問題を抱えることになります。
【必要量の目安】
例)20人規模の事業所
20人×5回×3日=300回分
例)100人規模の事業所
100人×5回×3日=1500回分
トイレの汚物もゴミ回収が再開されるまで捨てることができません。菌が漏れない衛生面や臭いに配慮したものを選ぶことをおすすめします。
CHECK 簡易トイレのポイント
内閣府による首都直下地震等による東京の被害想定によれば、各ライフラインの復旧目標日数は、電気で6日、上水道で30日、ガス(都市ガス)で55日となっています。
阪神淡路大震災では水道が復旧するまでに37日間かかったというデータもあります。
事業再開後、しばらくトイレが使えないことも考えられるため、早期事業再開を目指すのであれば、7日分など多めに備えましょう。
【6】毛布
毛布は、内閣府や各自治体で備蓄が推奨されている重要なアイテムの一つです。
アルミタイプの毛布は安価で手に入りますが、カサカサとした音が気になる場合があります。そのため、不織布製の毛布をおすすめします。
最近では、従来の1/4のスペースで保管できるコンパクトなタイプもあります。
【必要量の目安】
・1人あたり1枚
【7】ゴミ袋
ゴミ袋は、災害時に多目的に使用できる防災備蓄品です。
トイレが使用できない場合の簡易トイレとして利用できます。また、避難所やオフィス内で発生するゴミを衛生的に管理するためにも必要です。
さらに、衣類や貴重品の保護、雨具代わり、応急処置の際の防水シートとしても活用できます。
多機能でコンパクトなゴミ袋は、限られたスペースでの備蓄に最適であり、非常時の多様なニーズに対応するために欠かせません。
【8】ブルーシート
ブルーシートは多用途に使えるため、非常時に役立ちます。
例えば、一時的な休憩スペースを作る際の床材や仕切りとして利用可能です。床で寝る場合には下に敷くことができ、快適さを向上させます。
また、ゴミを眺めながら過ごすのが不快であれば上から被せて隠すこともできます。
軽量で持ち運びやすく、収納スペースも取らないため、オフィスの防災備蓄品として非常に有用です。
健康と清潔を保つための「衛生用品」
【9】生理用品
生理用品は女性従業員がいる企業では、トイレと同じく必ず必要なものです。
しかし、トイレは約60%の企業が備えているにも関わらず、生理用品はわずか約30%の企業しか備蓄していないというデータがあります。
Q7 自社で備蓄している、備蓄品の種類を教えてください。 (複数回答)
命に関わるものではありませんが、それがない避難生活で受けるストレスは、心身の健康に大きな影響を及ぼすことは言うまでもありません。入浴できない環境では、ウェットシートなどがあればなおよいです。
【必要量の目安】
・1日6枚 × 3日 × 女性従業員数
【10】衛生用品(マスク、ウェット、水不要の歯磨き、消毒液)
3日間オフィスに滞在する場合、断水などの不衛生な環境で雑魚寝することになるかもしれません。
感染症予防のためにマスクや消毒液が必要です。
また、ウェットシートは手だけでなく身体を拭くことができるので、入浴できないストレスを軽減できます。
【11】医薬品(解熱剤・胃腸薬)
最初の3日間は医療が利用できない状況を想定した準備が重要です。
大規模な災害では病院も被災し、小さな診療所が閉まっていたり、大きな病院がけが人や重病者の対応で手一杯になることが考えられます。
また、外出が制限される可能性もあります。このような状況下では、不衛生な環境やストレスによって従業員の体調が平時よりも崩れやすくなることが予想されます。
特に、解熱剤や胃腸薬、整腸剤などが必要とされることが多いため、忘れずに購入しておきましょう。使用期限にも特に注意が必要です。
情報収集のための備えも
【12】スマートフォン発電機・モバイルバッテリー
避難の必要性や徒歩帰宅の安全性を判断するためには、情報収集が不可欠です。
停電が発生しても、携帯電話の基地局は数時間から半日程度稼働することがあるため、スマートフォンを利用した情報収集が有効です。
充電できるように、ポータブル電源や乾電池式モバイルバッテリーを備えておきましょう。
また、蓄電池は高価ですが、スマートフォンの充電だけでなく、テレビでの情報収集や電子レンジ、暖房器具などの使用にも役立つため、非常に便利です。
防災士や専門家のアドバイスを受けましょう
帰宅困難者対策として備えるべき物品やその量には基準があります。
しかし、オフィスの耐震性が不十分で3日間留まることができない場合、移動先の避難所まで持ち運べる個別配布用の物品が必要です。また、小売店や商業施設など不特定多数の人が出入りする業種では、多様性に配慮したお客様用の備えも必要となります。
このように、オフィスの耐震強度、立地条件(ハザードマップや都心部かどうか)、従業員数や拠点数、オフィスの構造、在宅勤務の割合など、企業ごとに必要な物品やその量は異なります。
ぜひ、企業防災の専門家である防災士に相談してください。
明日にでも起こりうる災害に備え、大切な従業員を守りましょう。