海外赴任者の医療費最適化
海外赴任者に対する医療費について、以下のような課題はありませんか?
・高額な医療費が発生しないか心配だ
・赴任保険における保険料と補償内容のバランスが難しい
・緊急時には、保険会社のキャッシュレスサービスがうまく機能していない
このコラムでは、日本と海外の医療事情の違いを念頭に、医療費最適化を行うための具体的な方策について詳しく解説しています。
医療をめぐる日本と海外の違い
医療費
日本とは保険制度や医療水準が異なる外国では、医療費が高額となるケースが多くあります。
例えばアメリカ・ニューヨークでは、初診料が3万円程度、専門医の受診には5万円程度かかります。手術や入院を伴うとさらに跳ね上がり、入院は室料だけで1日30万円程度、急性虫垂炎(盲腸)の手術で150万円以上の請求が発生することも珍しくありません。※1
外務省や在ホノルル日本国総領事館の情報によると、過去には数日間の集中治療室での治療により、1000万円を超える請求が発生した事例があります。※2
これらの高額な医療費の実費負担が発生するのを未然に防ぐために、観光や出張などの短期滞在者に対しては海外旅行傷害保険の加入が推奨されています。特に、海外で長期間生活する赴任者は、病院を受診するリスクが高まるため、その必要性はさらに増します。
海外に駐在員を派遣する企業の多くは、海外赴任者とその帯同家族に対して海外旅行傷害保険の付保を行うことで、高額な自己負担が発生することを防いでいます。 一方で、多くの保険では持病悪化や歯科疾病・妊娠に関する診療は補償されず、治療費補償に最高限度があるプランもあるため注意が必要です。
標準医療(医療体制、治療法)
日本と海外とでは医療制度や治療法が異なるケースも多くあります。
例えばイギリスでは、初診や救急医療は、総合医による国民保健サービス(NHS)での診察が標準で、専門医の診療を受けるまでに数か月かかるケースもあるようです。※3
他にも、インドネシアのジャカルタでは医療従事者の不足・慢性的な交通渋滞などの影響で、十分な処置を受けられなかったり救急搬送に数時間かかったりするケースもあるようです。※4
こうした国や地域による医療事情の違いを認識し、それに応じた対応策を講じることが必要です。
※2 参考:外務省 海外安全ホームページ
海外邦人事件簿Vol.64 旅先で入院したら医療費が嵩む より
※3 参考:外務省 世界の医療事情 英国 より
※4 参考: 外務省 世界の医療事情 インドネシア より
医療費最適化のための具体的な方策
日本と海外では医療費や標準医療自体が異なります。
これらの違いを踏まえ、海外医療費の支出を抑制しつつ、必要なところに必要な資源を配分する医療費の最適化を実現するために行う具体的な方策を列挙します。
① 保険加入
冒頭から述べている通り、海外旅行傷害保険の加入は最も基本的な対策です。
企業負担であっても個人負担であっても、数千万円にも及ぶ高額医療費の発生は相当な損害です。
また、高額な医療費の発生は、必要な治療であっても即決できず、容体の悪化を招く恐れがあります。
海外赴任者とその帯同家族の命と健康を守る基礎的な対策として、海外旅行傷害保険の加入は欠かせません。
② ヘルスケア(健康診断、予防医療)
日頃からの健康管理は、疾病に罹患しないという意味で有効な対策です。
食事や運動などの生活習慣を見直して疾病を予防することは、医療費最適化という面でも重要です。
定期的な健康診断を実施して疾病の早期発見に努めたり、持病がある場合は渡航前に医師とよく相談して経過観察を行っていくことが大切になってきます。
③ 医療相談
日本と海外とでは医療水準や治療法が異なるケースが多くあります。
海外で受けた診療内容や治療方針についてセカンドオピニオンとして相談できるオンライン診療を活用することも有効です。
体調に異変を感じた際にまず医療機関を診察する必要性を相談したり、検査結果を基に帰国や手術の要否を確認することで、
医療費の最適化が望めます。
まとめ
以上のように、海外赴任者の医療費問題は、企業が直面する重要な課題の一つです。
海外の医療事情は日本と大きく異なり、その違いを理解し、適切な対策を講じることが求められます。
主に、海外旅行傷害保険の加入、日頃からの健康管理と定期的な健康診断、そして医療相談の活用が有効です。これらの対策を通じて、海外赴任者の医療費を最適化し、不要な負担を避けることが可能となります。
海外赴任者を抱える企業は、現地赴任者の健康を守りつつ、医療費の最適化を図ることで、経済的な負担を軽減し、事業の持続性を確保することができます。