リスク管理(危機管理)
海外出張において、土日祝の緊急対応はもちろん、情報配信から渡航データによる出張者の位置把握、トラブルサポート、安否確認まで、ニーズに合った危機管理をご提案します。
海外出張は、日本では想定しえないリスクが発生する可能性があります。従業員を海外に派遣する際、万が一の事態に備えた準備は十分でしょうか? 本コラムでは、企業がおさえておくべき危機管理のポイントについてお話したいと思います。
INDEX
海外出張では、病気や怪我はもちろん、文化の違いから生じるトラブルや盗難など、国内出張では想定しづらいリスクが存在します。 また、新型コロナウイルス感染症のような世界的なパンデミックは記憶に新しいですが、自然災害や政治的な混乱も考慮すべき事項です。 これらのリスクを管理し、万が一の事態に備えて従業員を守る体制を整えることが、危機管理の重要な役割となります。
HISでは、安全配慮義務の観点から以下の4点が危機管理のポイントになると考えています。
CHECK HISが考える危機管理の4つのポイント
・危険情報の発信があるか
・出張者の位置情報を把握できるか
・安否確認を、正確に即時行うことができるか
・出張者を即時安全圏に避難させることができるか
4つの要素を全て自社で対応することは難易度が高いかもしれません。しかし、いずれかの要素が欠けていると、有事の際に適切な対応ができず、従業員の安全を確保することが困難になる可能性があります。 それでは、これらに対してどのようなことを準備すべきか、詳しく解説していきます。
海外渡航情報や危険情報は、どのように入手していますか? 現代ではテレビやインターネット、SNSなど、様々なメディアから情報収集が可能です。 しかし、その情報は出張に行く上で必要な情報を網羅していますか?また、その情報の信憑性は確認できていますか?
海外渡航情報に求められるのは、即時性と正確性です。 管理者は、出張者へ日々変化する情勢を迅速かつ正確に伝えるための準備が必要です。
さらに、得た情報を従業員にどのように伝達するかも重要です。
管理者が情報を収集し、出張者へメールで配信する、収集した情報を特定のポータルや掲示板に掲載するといったルールを設けている企業もあるかと思いますが、メールが受信できない・ポータルが外部から開けないというトラブルも想定されるため、このような情報伝達方法だけでは不十分です。
海外渡航情報や危険情報は、常に最新のものを、いつでもどこからでも確認できるように準備しておきましょう。
CHECK 出発前にチェックしておくべきサイト
外務省|たびレジ
3ヵ月未満の渡航の場合、出発前・出発中も外務省からの最新の安全情報を日本語で受信できる「海外安全情報 無料配信サービス」です。
外務省|オンライン在留届
海外に住所または居所を定めて3ヵ月以上滞在する場合、登録をしておきましょう。日本人が巻き込まれた可能性がある有事が発生した際に、大使館や総領事館が安否確認を行うためには、この情報が必要となります。
出張者の位置情報管理はどのように行っていますか?
例えば、「今、会社の従業員が、海外で大規模な自然災害に巻き込まれたかもしれない」というときに正確な位置情報を把握する手段はお持ちでしょうか。
出張申請書や航空券情報を通じて、どの都市にいるかは把握できますが、その都市内の具体的な位置までは把握できません。また本人に直接連絡をして安否確認をする際、「電話が繋がらない」「メールの返信がない」などのトラブルも想定されます。
有事が発生したときに対応できる位置情報管理を検討しませんか?
CHECK 位置情報の確認手段は?
チェックイントラッキング
出張者が特定のアプリを起動したタイミングで、GPSが端末の位置情報を取得し特定する手法です。この方法では、出張者に対してアプリから安否確認を行う指示を出すことが可能です。これにより、安否回答を行った地点のリアルタイムの情報を管理者が把握できます。
アクティブトラッキング
常にGPSを使用して出張者の位置を正確に特定する方法です。この手法では、管理者が出張者の位置情報をピンポイントで特定可能なのですが、業務時間外における出張者のプライバシーとのバランスを取ることが難しい側面があります。
様々な位置情報確認の手法がありますが、緊急事態が発生した場合のみピンポイントで位置を把握でき、通常時は出張者のプライバシーを保護することが可能なチェックイン・トラッキングを採用することで、バランスの良い位置情報管理が可能になります。
現在の安否確認の体制は、以下のポイントを網羅できる状態になっていますか?
CHECK 安否確認時に最低限把握するポイント
・誰がどこにいるか、滞在者の具体的な位置情報を確認する
・危険地域に滞在している従業員の安否確認
・滞在者からの安否回答を受け取る
安否確認の担当者設置について考える際、現地との時差を考慮すると24時間体制で専門担当者を常駐させることが理想的です。
しかし、予算や実行可能性の問題から、これが難しいケースが多いのが現状です。さらに、危機管理は予測不能な事態が連続するため、全てをシステムに頼ることは現実的ではありません。
このような現状を変えるためには、24時間対応可能な専門家に安否確認業務をアウトソースしましょう。これにより、正確かつ即時の安否確認を実現することが可能になります。
現地の従業員から助けを求められた場合、すぐに対応できますか?
本人と連絡がとれたとしても、
「自然災害で身動きが取れない」
「すぐに助けて欲しい」
と言われた場合の救助手段をお持ちでしょうか。このような場合、日本からの遠隔での対応や、旅行会社頼みでは不安ですよね。
そこで、緊急避難スキームの準備が必要となります。
CHECK 緊急避難スキームを考える上で大切な3つのポイント
①自社で緊急避難スキームを準備できるか
自社で適切な避難体制を準備する際、単に緊急対応の窓口を設けるだけでは不十分です。世界各地での緊急避難に対応できる専門的な知識を持ったスタッフを配置し、その人が最善の対応策を判断できる体制があるかを確認する必要があります。
②避難要請に24時間体制で対応できるか
災害は予測不可能です。いつ何時起こるかわからないため、24時間体制で避難要請に対応できる体制を整えることが求められます。
③現地にスペシャリストを派遣でき、瞬時に最善の対応策を判断できるか
現地の状況を把握し、最善の対応策を瞬時に判断するためには、スペシャリストの派遣が必要です。現地の言語や文化を理解し、適切な対応ができる人材を確保することが重要です。
上記3つを内製で対応するというのは難しい部分も多いかと思います。外部のサービスを利用しながら、従業員を守るための体制作りを行いましょう。
4つの危機管理のポイントをお話させていただきました。
それぞれの項目に対して準備をしておくことは非常に重要ですが、それだけでは十分ではありません。
危機管理を行ううえで最も重要なのは、有事の際にどのように対応すべきかを示す危機管理マニュアルを設置することです。
平常時は理解していても、緊急時になると何から手をつけていいのか分からなくなることもあります。
そのような事態に備え、どのように対応していくのかが分かるように、危機管理マニュアルを作成しましょう。
CHECK 危機管理マニュアルに取り入れるものとは
具体的な行動指針の設定
緊急事態が発生した際には、出張者や管理部門がどのような行動を取るべきかを具体的に記載します。それぞれの立場から対応する方法を明確にしておくことで、迅速かつ効率的な対応が可能となります。
予防策のルール化
海外の危険情報をもとに、「特定の行為の禁止」「特定エリアへの訪問時の注意点」「使用禁止の航空会社」「特定の都市への訪問に必要な許可」などのルールを設定します。
これらのルールは会社全体で共有したりマニュアルに記載することで、事前にリスクを防ぐことが可能となります。
さらに重要なことは、マニュアルの存在を従業員全員に周知することです。
「マニュアルがあってもどこで確認するのかわからない」
「緊急時、どこに連絡をしていいかわからない」
このような声を耳にすることがありますが、これらはマニュアルが存在しても認知しておらず機能しない事例です。
そのため「設置しただけ」ではなく、どのように運用するかという部分まで考慮することが重要です。
また、世の中の状況は日々変化しています。
今設置しているマニュアルは最後にいつ見直しをしましたか?
数年間、同じマニュアルを使い続けていませんか?
変化する情報に対応するため、少なくとも1年に一回は見直しを行うことが必要です。
定期的なメンテナンスも管理者の重要な役割となります。
海外出張における危機管理の重要性とその具体的な対策について解説してきました。
危機管理は、予測不能な事態に対応するための準備と、それを適切に運用するための体制作りが求められます。それぞれの企業が自社の状況を見つめ直し、従業員の安全を確保するための最善の策を講じていくことが大切です。
また一度作ったら終わりではなく、常に見直しを行い、改善を続けることが求められます。従業員を守るためにも自社の危機管理体制が問題ないか、これを機に今一度確認してみましょう。不安を感じている点がある企業様は、ぜひ一度ご相談ください。
たびレジは大前提として必要です。注意点として、不要な国の情報配信を停止し、必要な国の情報を見落とさないようにするといった工夫が必要です。例えば、1回目の出張は中国、2回目の出張はアメリカというケースで考えてみましょう。設定を変えない限り、中国の情報が配信され続けるので、大事なアメリカの情報が埋もれてしまうことが予想されます。
次に、「自社現地支店の情報ではダメか?」という点については、あくまでセカンダリの情報源としてのご活用を推奨いたします。発生した事件の事実に加え、どのような行動をすべきか、といった情報を発信する、トラベル危機管理のプロは必要だと考えています。
国内の危機管理ツールとして、安否確認機能をSMSで発信して管理するツールは有用だと思います。国内においては、安否を回答できる状態であれば、自分で119番や110番ができますし、自分のいる場所を含め、危機情報を掌握しやすく、厳格な位置が把握できなくても問題ないケースが多いからです。
一方で海外の場合、位置が把握できない安否確認ツールのみだと「安全じゃない」「助けて欲しい」という連絡が返ってきた際に、出張者が正確に自身のいる住所地を管理者に伝えたとして、管理者は即座にその住所地の管轄警察、消防にコンタクトを取ることはできるでしょうか?出張者が住所地を把握していないケースも多いはずです。
そのような場合に、仮に電話が通じたとしても日本にいる管理者と出張者の間で、出張者の位置を正確に把握することは困難でしょう。 危機管理は一分一秒を争います。位置の特定に時間がかかる要素を排除して、即座に位置を把握した上で具体的な避難計画の策定をすることができる状態を作り出す必要があり、そのためには、GPSという機能を用いて安否回答とあわせて出張者の位置を正確に特定する機能を持たせることが必須です。
どこまでのサービスを求めるかによって費用は異なります。
医療搬送のように、現地で重傷を負い、日本へのエアアンビュランスでの搬送などが必要になったときのサポートや、赴任者向けの現地の危機管理にかかる勉強会の開催、護身術のトレーニングといったサービスまでを含めるとなると、年間契約のような形での費用が必要になってきます。その企業様の状況に応じてコンサルティングさせていただきますのでぜひ一度ぜひ一度ご相談ください。
コンサルタントでも、危機管理分野の専門家である必要があります。専門家でないと、不十分なルール提供になる可能性もあるので、注意が必要です。また、コンサルタントだけでは遭遇した後の避難サービスの提供はできません。ここは外部エージェントを交えて、対応が必要です。