そもそもLCCとは何?
日本でLCC(ローコスト・キャリア・格安航空会社)の元年と言われているのが2012年。日本のLCCの歴史はまだまだ浅いと言えるでしょう。しかし、その存在感は年々増しているといっても過言ではありません。人気急上昇の秘密は「安さ」にあります。私たちになじみが深いレガシー・キャリア(既存の大手航空会社)に比べ、LCCは安価な運賃を実現しています。
大阪/関西国際空港(KIX)と台北/台湾桃園国際空港(TPE)間をLCCとレガシー・キャリアで比較してみます。たとえば、海外格安航空券の比較ができるHISのサイトにて2023年11月08日に空席がある航空券で、2023年12月07日の片道航空券を確認してみました。
LCC最安値はピーチの直行便 で諸費用込み22,740円!レガシー・キャリア最安値JAL直行便では諸費用込み35,800円。LCCはレガシー・キャリアよりもお得に購入ができます。
LCCがレガシー・キャリアより安い理由
どうしてLCCは低価格を実現できるのでしょうか。それにはいくつか理由があります。
1.使用機種を統一している
レガシー・キャリアではさまざまな種類の航空機を使用しています。一方、多くのLCCでは使用機種を統一しています。一方、多くのLCCでは1種類に統一しています。なぜなら航空機の免許は機種ごとに取得が義務づけられており、機種を統一すればパイロットや整備士の育成にかける費用を抑えられます。さらに部品なども絞ることができるため、こちらのコストも抑えることが可能です。
2.無料サービスをなるべく行わない
レガシーキャリアを利用すれば機内食が付き、毛布や枕の貸し出しもあります。しかし、こうした無料サービスの実現にはコストがかかり、航空会社はそれを運賃に反映させなければなりません。レガシー・キャリアで無料のサービスがLCCでは有料のケースがほとんどです。機内食や飲み物も例外ではありません。有料化することで、サービス利用者が限定されます。結果、大幅なコストダウンが可能となります。こうした付帯サービスのコストを運賃と切り離すことで安価な運賃を実現しています。
3.厳しい手荷物重量制限
チェックインの際に預ける手荷物も、LCCの低価格と大きく関連します。レガシーキャリアでは、おおよそ20kgまでは無料で手荷物を預けることができます。一方、LCCでは預ける荷物がすべて有料というケースが多いです。これにより乗客も荷物をなるべく軽めにしようとするため、飛行機全体の重量が軽くなりその分、燃料費も節約できるという効果もあります。
4.空港での駐機時間が短い
レガシー・キャリアに比べ、LCCは空港での駐機時間が非常に短くなっています。たとえばレガシーキャリアでは到着から次の出発までの駐機時間が1時間のところを、LCCでは40分と短く設定しています。LCCは1機で運航する1日の便数を多く設定しているケースが多く、運用効率を高めることで利益を出しているので価格も低く設定できます。
5.メジャー空港の利用をできるだけ回避
東京から飛行機で旅に出る、と聞くと、ほとんどの人は羽田を思い浮かべるでしょう。羽田の様な都心に近くアクセスも便利な空港は、空港着陸料が高くなっています。ところが、東京からやや離れた茨城や富士山静岡といった空港になると、それは低く抑えられています。LCCでは東京へのアクセスよりも低価格を重視して、羽田を回避し、こうした空港を利用するケースがあります。
一概には比較できないのですが、自宅や宿泊地が茨城空港や富士山静岡空港に近い場合は選択肢として有力です。茨城空港は、成田や羽田に比べると着陸料が30%以上割安で、この差額が低運賃の実現に寄与しています。
また、成田空港第3ターミナルなどの使用料が割安なターミナルを利用しているのが多いのもLCCの特徴です。
このほかにも、後述するように座席ピッチ(間隔)を狭くして席数を増やすといった工夫を凝らしていることで、LCCはレガシー・キャリアよりも低価格を実現しています。
6.試す価値あり!LCCのプレミアムシート
安さばかりが話題先行しがちなLCCですが、ビジネスクラスがあるLCCもあります。
たとえば日本で就航されているLCCでは、ジェットスターのビジネスクラスやエアアジアXのプレミアムシート、ZIPAIRのZIP Full-Flat/ジップ・フルフラットが挙げられます。狭い、窮屈というイメージのLCCの座席ですが、こちらでは広々としたシートになっています。さらにLCCの他のクラスよりワンランク上のサービスが受けられます。
ジェットスターのビジネスクラス(一例)
- 前の座席との間隔、シートピッチは96cm(エコノミークラスのスタンダードシートより約18cm広め )
- フットレスト・ウィング付ヘッドレスト有(シートにはPCに便利な電源内蔵)
- ノイズキャンセリング機能のある特別設計のヘッドセット有
- 食事、各種アルコール類、ソフトドリンク、毛布、枕、アイマスク等の無料サービス有
- 空港では専用チェックインエリアあり
エアアジアX(エアバスA330型機)のプレミアムフラットベッド (一例)
- 約180度リクライニングできるシート(出発2時間前まで ※運賃の差額が生じることがあります)
- 無制限のフライト予約変更可能
- 食事、ミネラルウォーターの無料サービス有
- 枕、ブランケットの無料サービス有
ZIPAIRのZIP Full-Flat/ジップ・フルフラット (一例)
- リクライニングをすべて倒すと180℃水平(フルフラット)な状態になるヘリンボーン配置のシート
- 窓側を含めたすべての座席が通路に面しているため、他の乗客を気にすることなく出入り可能でストレスフリー
- ZIP Full-Flat/ジップ・フルフラットに関する詳細はこちらの記事でも紹介しています
LCCのビジネスクラスは、エコノミークラスに比べれば割高になりますが、レガシー・キャリアのビジネスクラスと比較すれば充分割安でラグジュアリー感を体験することができます。
LCCのデメリット
ここではレガシー・キャリアにはないLCCのデメリットをいくつかピックアップします。
1.空港が遠い、乗り場が遠い
LCCの利用空港は「マイナー空港」であることも多いので、出発前にこの空港がどこにあるのか、そこへのアクセスなどの情報収集をしっかり行っておきましょう。さらにメジャーな空港であっても安心できません。というのもLCCはレガシー・キャリアに比べて、搭乗口がかなり遠い場所にあることが多いからです。また、関西空港や中部国際空港のように空港に到着してから、さらにバスや徒歩でLCC専用ターミナルに向かわなければならないということも珍しくありません。こうした状況を考えれば、LCC利用の場合は、早めに空港に到着しておくのがベターです。
2.遅延が多い
レガシー・キャリアに比べ、駐機時間が非常にタイトなLCCでは、天候の問題などでひとたび遅延が生じれば、その後の便も遅延します。同日内の遅延ならともかく、日をまたいでしまうような大幅遅延もあり得ます。LCC乗り継ぎを考える場合、このような遅延の可能性の高さも充分に念頭に置いて、余裕のあるスケジュールを組んでおくことが大切です。
3.手荷物の追加料金が発生する場合がある
レガシーキャリアに比べて、受託手荷物(預ける手荷物)の制限が厳しいLCCでは、制限重量の超過に神経を使います。航空会社や、運賃タイプによって異なりますが、事前に受託手荷物の予約をした場合、有料になる場合があります。会社によっては預ける荷物は全て有料としているところや、機内持ち込みの荷物にも重量制限を設けているところもあるので、予約時や出発前によく調べておくことが肝心です。さらに少しでも重量オーバーした場合、超過料金が発生し「安いからLCCを選択したのに、手荷物の料金を加算したらそれほどお得感がなくなった」ということになりかねません。
事前予約をするとしないとでは大違いの受託手荷物料金
LCCでは、基本的に受託手荷物には事前予約が必要とされています。さらに重要なことは、「事前予約なしで当日に預けると、予約時にかかる追加料金よりも高額な料金がかかる」ということです。さらに、予約時に手荷物の重さを確定しておくことが大切です。受託手荷物は預け入れの際に、必ず計量されます。
予約をしていた場合も、搭乗当日預ける際に重量をオーバーしている場合は、さらに追加料金を支払うことになります。
LCCが低価格を実現できているのは、その徹底したコスト削減にあります。具体的には、予約状況から機材の重量をある程度正確に予測し、搭載する燃料の量を最小限に抑えているのです。軽い機体で燃費を向上させ、コストダウンを図るためでしょう。
ちなみに、機内持込手荷物についても同様の規定があり、超過すると機内には持込出来ず、搭乗ゲートで「受託手荷物」となり、空港カウンターでの申請よりも高い料金が加算されるか、同意できない場合は、搭乗を断念しなくてはいけません。つまり、手荷物の重量オーバー分、搭載する燃料を増やすため、LCCの場合は追加料金を徴収する必要に迫られるのです。結果、予定していない手荷物が増えその重量がかさんでしまうと、高い追加料金を支払わねばならなくなり、安価であるLCCの利点が消えてしまうことになるのです。
予約をしていた場合も、搭乗当日預ける際に重量をオーバーしている場合は、さらに追加料金を支払うことになります。
4.機内サービスは有料
機内食(多くは軽食)、飲み物といったサービスは有料となっています。また、枕や毛布レンタルも用意されている数が多くないため、服装の調節やトラベルピローの持ち込みなど、出発前の準備は周到に行うことが必要です。事前に飲み物や食事、ブランケットの有無や、機内でのクレジットカード使用可否等、「必要なものの値段」「購入方法」「できないこと」を確認しておくと良いでしょう。
5.座席の間隔が狭い
一度のフライトでなるべく多くの乗客を乗せることで低価格を実現しているLCCでは、レガシー・キャリアに比べると非常にシート・ピッチ(前後の間隔)が狭くなっています。そのため、LCCでのフライトに慣れていない人は、かなり窮屈な思いを強いられることとなります。
6.制限事項が多い
LCCの航空券には制限事項が多いことも覚えておきましょう。例えば運賃タイプに寄りますが、最安値の設定となっている運賃タイプはキャンセル料が100%取られることが多く、払い戻しには一切応じてもらえません。
欠航や遅延が発生した場合の「他社便への振替」など、代替え策が取られる可能性も非常に低いです。また、次に乗ろうとしていた他社便へ乗継ができないことも充分に起こりうるのですが、その乗継に対する補償は一切ありません。
7.マイレージが付かない
LCCではマイレージサービスがほぼありません。マイレージを集めている人にとっては、レガシーキャリアにした方が良いケースがあります。(必ず航空会社のHPをご確認ください。)
当ページは、2024年1月現在の内容です。関連する記事をお読みください